昨年夏以降、首都圏(1都3県)の中古マンション市場では、契約件数は増加傾向にもかかわらず、在庫が減っているとの声があります。その影響もあってか、中古マンション価格は新型コロナウイルス禍でも値下がりする気配がありません。これまでは、株価上昇と金利低下で中古マンション価格が上昇してきたと筆者は考えていましたが、昨年以降、状況は変わったのでしょうか。
首都圏中古マンションの需給バランスは、毎月の在庫倍率(成約件数1件あたり在庫件数)で代替することができると筆者は考えています。この在庫倍率の前年同月比増減と成約平均単価(1平方メートルあたり)の関係をみてみましょう。昨年4~5月の緊急事態宣言の下で契約件数が急減したことから在庫倍率が急増し、平均成約単価が下落しました。しかし、夏以降はその反動で契約件数が増加する一方、コロナ禍で売却を様子見する層が増えたことから在庫倍率が前年対比で急減し、価格が上昇しているように思えます。
中古マンション価格は、株価、金利、需給バランスの動きである程度説明できると筆者は考えています。株価が堅調なときは景況感もよく将来の収入に対してもポジティブな発想になりやすいでしょうから、中古マンション購入意欲も増します。住宅ローンの多くは元利均等返済ですから、金利が下がれば調達できる額も増え、結果的に中古マンション価格の上昇に寄与します。需給バランスは、需要が供給を上回るなら上昇、逆ならば下落と考えられますので、在庫倍率が低くなれば価格は上昇するでしょう。
こうした前提で、2017年1月からコロナ禍前の19年12月までと、20年1月から21年3月までについて、株価(日経平均株価)、金利(フラット35)、在庫倍率の前年同月比が首都圏(1都3県)、23区、1都3県から23区を除いた郊外エリアの中古マンションの価格にどのように影響していたかを回帰分析を利用して調べてみました。
首都圏では、17~19年は株価と金利の影響がみられ、株価上昇、金利下落が中古マンション価格を上昇させる要素となっていました。ところが、20年以降は在庫倍率と株価のみが価格に影響を与えているようです。金利は昨年以降、これ以上は下がらないレベルに到達していることを考えると、金利が影響していないことは納得できます。
しかし、東京23区については、17~19年は株価と金利が、20年以降は株価のみが価格に影響しているようです。郊外は、金利のみ影響していたものが、在庫倍率のみが影響するという結果になっていました。
23区も在庫倍率は低下していますが、株価に敏感な層が需要者に多いためか、これまで同様、株価の影響を相変わらず強く受けているようです。一方、郊外は以前から株価に左右されることはないマーケットで、現在は需給バランスのみから影響を受けている状況です。
在庫倍率の低下は、需給バランスが均衡に至る過程で解消されるとみています。おそらくワクチン投与の一巡などで経済活動が正常化する流れに合わせて均衡に向かうとみられます。そうなれば、郊外マンション価格の上昇傾向に変調が生まれるでしょう。一方、23区は現時点でも株価動向の影響を受けていますから、今のところ価格調整がすぐに起こるとは考えにくいです。ただし株価が実体経済を反映しているとは言いにくい面もありますし、コロナ後の景気回復を見込んだ金利上昇にも留意する必要があります。23区内であってもこのまま一本調子で価格が上昇するとは考えないほうがよいと思います。